春学恋愛部
プロローグ
学校の帰り道。
若々しい草の匂いが乗った風を感じながら、柚果は河川敷を歩いていた。
少し先の土手の下から聞こえる、赤ちゃんの泣き声が耳につく。
母親は赤ちゃんを抱っこしたまま、腰を屈めてしきりに地面を見ており、反り返る形になった赤ちゃんが、余計に泣き喚いてた。
(どうしたのかな、助けてあげなくちゃ)
走り出そうとする柚果。
パタパタパタ……
柚果と同じ制服の男子が、彼女を追い抜いていく。
彼のお尻のポケットで、銀色の鍵のストラップが揺れて、カチャカチャと音を立てていた。
その人は母親に声をかけると、地面を這いつくばって何かを探しだした。
夕陽でオレンジ色に染まる白いブレザーが、汚れることも気にかけていない様子で。
しばらくして、拾い上げた何かが、柚果の目にはとびきり眩しく見えた。
母親は何度も頭を下げている。
探し物が見つかったのだろう。
彼は柚果に背を向けたまま、走り去って行く。
柚果は、その場面を映画を見るかのように見つめていた。
太陽の光が眩しくて、彼の顔は見えなかった。
若々しい草の匂いが乗った風を感じながら、柚果は河川敷を歩いていた。
少し先の土手の下から聞こえる、赤ちゃんの泣き声が耳につく。
母親は赤ちゃんを抱っこしたまま、腰を屈めてしきりに地面を見ており、反り返る形になった赤ちゃんが、余計に泣き喚いてた。
(どうしたのかな、助けてあげなくちゃ)
走り出そうとする柚果。
パタパタパタ……
柚果と同じ制服の男子が、彼女を追い抜いていく。
彼のお尻のポケットで、銀色の鍵のストラップが揺れて、カチャカチャと音を立てていた。
その人は母親に声をかけると、地面を這いつくばって何かを探しだした。
夕陽でオレンジ色に染まる白いブレザーが、汚れることも気にかけていない様子で。
しばらくして、拾い上げた何かが、柚果の目にはとびきり眩しく見えた。
母親は何度も頭を下げている。
探し物が見つかったのだろう。
彼は柚果に背を向けたまま、走り去って行く。
柚果は、その場面を映画を見るかのように見つめていた。
太陽の光が眩しくて、彼の顔は見えなかった。
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