春学恋愛部
海斗は眉を寄せて、柚果を見つめている。その表情には先ほどまでの怒りは見えないものの、何を考えているのかはさっぱり読み取れなかった。

「…………」

「…………」

二人とも黙り込んだまま、時間だけが流れる。柚果は海斗から目を反らさずに睨み付けていた。

「華は、どこにいるって?」
長く息を吐き出した後、海斗は抑揚のない声で尋ねた。

一瞬迷ったけれど、隠しても仕方ない、と柚果は答える。
「私のクラスに行くって行ってた。彼氏と……写真撮るんだって」

「お前も来い」
柚果の手を掴んで海斗は大股で歩き出した。

「私、やだっ」と海斗の手を振り払おうとする柚果。
心の中は海斗が振られるのも、うまくいくのも見たくない気持ちでいっぱいだった。

それなのに海斗は、そんなわがままは許さないとばかりに強く手を握ってくる。
「俺に逃げんなって言っといて、お前は逃げんのか?ふざけんな」

不機嫌そうに海斗に言われた柚果は、何も言い返せなくなって着いていくしかなかった……。
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