春学恋愛部
その姿が目に入るなやいなや、海斗はよく通る声で名前を呼ぶ。
「華」

強ばった表情で、二人が振り返り、小さな声で華が口を開いた。
「何……?」

「俺はずっとお前のことが好きだった。だから姉貴面されてムカついた。兄弟なんかやめて、俺ともう一度付き合わないか?」

やっぱり無理!!
海斗がそんなこと言うの、聞きたくない!!

心の中で叫んだ柚果の瞳からは、言葉に出来ない気持ちが溢れてくる。
海斗には素直になって欲しい気持ちと、海斗を失いたくない気持ちで、柚果の心はめちゃくちゃだった。

我慢しきれずに走り出そうとした柚果の肩を、海斗が強く引き寄せた。
「お前はここでじっとしてろ」

抱き寄せられた柚果は観念して小動物のように身を震わることしかできなかった。

周りの生徒たちが、興味深そうに4人のことを見つめている。
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