春学恋愛部
柚果は海斗の手を強く握って、微笑んだ。
「わかった。どんな海斗でも、私は見てるから。ずっと見てるから」

デートの後、いつもの分かれ道を通り過ぎて柚果の家の前まで二人は歩く。
文化祭の後から、海斗は柚果を一人では帰さなくなった。

一度柚果が、「海斗は私のこと、心配で仕方ないんだよね」とふざけて言ったことがある。
海斗は耳まで真っ赤にして「そんなんじゃねーよ。歩きたかっただけだっての」と言っていた。

いつも強引で俺様な海斗だけど、実は照れ屋で可愛い。
柚果はそんなところを、みんなには秘密にしておきたいと思っている。

「じゃあな。テスト勉強しろよ」
柚果の家の玄関前、一言言って海斗が踵を返そうとする。
海斗と離れるのが寂しくて、柚果は思わず制服の袖を引っ張った。

振り返った海斗は困ったように眉尻を下げて呟く。
「そんな顔すんなよ……」

そして、柚果の頬に手を伸ばして続けた。

「クリスマスパーティの後、泊まりに来いよ……」
柚果の手がびくっと反応して、袖から離れる。

「じゃあな」背を向けて歩き出す海斗の背中を、見えなくなるまで柚果は見送っていた。
内心の動揺を隠すように震える手を握り締めながら。
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