春学恋愛部
女子会2
「苺のタルトと……レモンパイも下さい」
緩んだ頬で注文を終えた柚果に、鈴花が目を丸くしている。

「珍しいね、どーしたの?」

「いつもみたいに、海斗に怒られるからって言わないんだね」と、華がかぶせる。

「今日は海斗も了承済み。だって、ほら」
右上に赤で80と書かれた数学のテストを鞄から取り出して、柚果は得意げな顔だ。

「うわっ、数学で80点?! 柚果は補習友達だと思ってたのにー」
鈴花が情けない声をあげる。

確かに柚果も鈴花も、中学校ではそれなりの成績だったけれど、優秀な生徒たちが揃う春学では中の下といった成績だ。

ちなみに正樹に至ってはスポーツ推薦で入学しただけあって、下から数えた方が早い。

受験生なのに12月にお茶をしていられる華の成績は、言うまでもない。

「厳しかったんだよー。海斗」
柚果は勉強会の様子を思い出してうんざりした顔になった。

「お前、バカじゃねーの?! これ、本気で分かんねーの?」
「この問題、20問解くまで休憩なしだから」

どん底まで突き落とされるムチの後にやってくるアメの甘さは格別で、柚果は鼻先にニンジンをぶら下げられた馬のように走り続けた。

「よく頑張ったな。ご褒美に、キスしてやろーか?」
「成績が上がったら、今度はもっと気持ちいいこと、教えてやるよ」

色っぽい顔で言っていた海斗の顔を思い出して今度は赤くなる。

一体どんなこと、教えてくれるの……?
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