春学恋愛部

「それで、海斗が紹介したいとういのは、どちらのお嬢さんかな？」
柚果が弾かれたように大きく頭を下げた。

「あの、初めまして！　今日はご招待ありがとうございます！　私、海斗さんとお付き合いさせていただいております柚木　柚果と申します。よろしくお願いします」

声が震える柚果の肩をポンポンッと叩いて、苦笑いしながら「お前、緊張しすぎだろ」と海斗が口を開く。

そのまま父親をまっすぐ見据えて続けた。

「お父さん。この場を借りて伝えておきたいことがあるんです。俺は彼女に出会って、やっと逃げるのはやめようと思いました。
俺、医者を目指したいと思います。お父さんの望むような医者になれるかはわかりませんが、努力したいと思います。
これからもご迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします」

背筋を伸ばして一礼する息子に、父親は目を見開いてしばらく固まり、ゆっくりと息を吐き出した。

「息子に理想を押し付けすぎだと妻に叱られてね。お前は自分の好きにすればいいと思っていたんだ。……それがこんなことを言われるなんてな。
柚果さん。ありがとう。海斗をよろしく頼むよ」

サンタクロースのように鼻と目を赤くした海斗の父親に、柚果は大きく頷いた。