春学恋愛部
授業終了を告げるチャイムが鳴り響き、クラスメートたちは足早に教室を去っていく。

チャイムも聞こえないかようにボーッとしていた柚果が自信なさげな呟きを漏らした。

「鈴花……先輩、一緒に帰りませんかって誘ってもいいかなぁ」
頑張ろうと思った心は早くも萎れてしまっている。

「いいに決まってるじゃん!彼女なんだから。早くしないと先輩帰っちゃうよ!」

鈴花の叱咤に背中を押してもらい、柚果はスマホを取り出して文字を打つ。

『一緒に帰りませんか?』

ブーブー。すぐに震えるスマホ。

『30秒で靴箱まで来たら』

「わぁ、鈴花、また明日ね!」

柚果は転がるように駆け出した。
鈴花の、笑いを含んだ「頑張ってね~」という声を背中で聞きながら。

運動は苦手なのに…今日走ってばっかりだ。

そう思いながら心が弾む。自分の靴音がいつもより軽い音を立てている気がする。
走りながら歌いたいぐらいの気分だ。
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