春学恋愛部
「お前らは、俺の顔があればいいんだろ?
俺の中身なんかどーでもいいだろうが、
いちいち踏み込んでくんな」

氷のように冷たい表情で、早口で捲し立てる海斗は、明らかに柚果を拒否している。

不安でいっぱいな心を落ち着かせながら、柚果は真っ直ぐに海斗を見つめ、口を開いた。

「私は、先輩のことが知りたいです。
そりゃあ先輩は格好いいと思うけど、それだけじゃなくて…。
この河川敷で、赤ちゃんを抱いたお母さんのこと、制服が汚れるのも気にしないで助けてあげてた。
そんな先輩だから、好きになったんです……」

海斗が目を逸らして横を向き、小さな声で「変なとこばっか見てんなよ」と呟いたが、柚果には聞き取れなかった。

(あ、耳、ちょっと赤い……?
夕日のせいだよね、でも、機嫌ちょっと治ってる?)

海斗の雰囲気の変化の意味もわからず、柚果は彼を見つめ続ける。
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