春学恋愛部
しばらく裁縫に集中していると、ふと耳に騒がしい声が届いた。

「あっつー、体育館ヤベー。マジ蒸し風呂だわ」

「外涼しー。俺たちねっちゅうしょーとかゆうやつ、なるんじゃね?」

どうやらバスケット部員たちが休憩らしい。

鈴花のいる教室の真下には水道があって、頭から水をかけあって遊んでいる様子が見えた。
短髪にスポーツタオルを引っ掛けた正樹の姿を見つけ、思わず目で追う鈴花。

その正樹に、女子バスケ部の数人が近付いていく。先ほどトイレで会った先輩の姿も見えた。
女子の一人が正樹に声をかけようとした瞬間、思わず鈴花は声を出していた。

「正林先輩!!」

顔を上げた正樹が目を見開いて、明らかに狼狽している。

男女のバスケ部員たちが一斉に鈴花に目を向けた。

(思わず声かけちゃったけど、どうしよう。皆見てる。だって、やっぱり、私は……。
あの頃とは違う。正林先輩だって、きっと彼とは違う気がする)

「今日、部活終わったら、一緒に帰りませんか。待ってますから」
鈴花はやっとのことでそれだけ吐き出すと、正樹の返事は待たずに窓を閉める。

急に頬の熱が上昇したのを感じた。
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