春学恋愛部
「何やってんの?海斗……」
不機嫌な声の柚果を気にする様子もなく、海斗は切れ長の目を彼女に向ける。

「あと一時間で休憩だから、お前んとこ行ってやるよ。俺と写真、撮りたいんだろ?」

とろけるような甘い声で囁かれると柚果は弱い。
「と、撮りたいけどっ……」

「嫉妬してんのはわかるけど、浮気したりしねーよ。俺にはお前だけ」
笑いを含んだ声。
完全にからかっている海斗に、不覚にも柚果はドキドキしてしまう。

鈴花はジュースを口に含み、知らん顔して笑いを噛み殺している。

「海斗、次のお客さん、頼むわ」
隣の席に一人の女の子が腰掛け、結局何も言い返せない柚果を尻目に海斗が立ち上がった。

「じゃあ、後でな。……指名ありがとう」

隣の席の女の子に笑顔を向けた海斗が一瞬で凍りついた。
「お前、何で……」

隣の席に座っているのは、有名なお嬢様学校の制服、紺のボレロに長めのスカートを身に着け、緩く巻かれた長い髪の女の子だった。

目鼻立ちのはっきりとした美人だが、彼女の表情は不安で一杯に見える。

「海斗……」と小さな声で呼び掛ける彼女に、「帰れよ」と明らかな拒絶を見せる海斗。
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