クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「なんでしょう」
「その……なんだ。奥さんと初めてデートしたとき、どこでなにをした?」

 こんな質問を仕事中にしてしまったせいで、ひどく気まずい思いを感じる。橋本の顔も当然見ることができず、コーヒーを味わうふりをしてごまかした。

「それは……業務に関係あること……ではないですよね」
「……まあ、そうだな」
「……もしかして、奥様とデートをしたことがないんですか?」
「今、俺の話はしていないだろ」
「ずっとぼんやりしていたのは、まさかデートのことを考えていたからでは……」
「俺はデートだと思ってない」

 言い切って、持っていたマグカップをデスクに置く。
 橋本に言っても意味がないことを、口にしてしまってから思い出した。

「ただ、純粋に……好奇心だ。うん」
「奥様とデートをしたことがないんですね」
「しつこいぞ」
「行き先はもう決まっているんですか?」
「……だからデートじゃない」
「じゃあ、外出先という言い方に変えます。あまり意味はないと思いますが」
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