クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「父子家庭で、ずっと厳しくしつけられてきたんです。だからひとり暮らしに憧れていて……。一日目は絶対に夜遊びをしようって決めてました」
「夜遊び……ですか?」
「はい。気になったバーでカクテルを飲むんです。それで、終電ギリギリに帰ります。そこまでやったら、これから自分で決めることに勇気を出せる気がして。……変なことを言ってるって自分でもわかってるんですけど」

 ロングアイランドアイスティーは驚くほど私の口に合った。おいしくてついつい話が弾む。

「夜遊びとおっしゃるので、てっきり繁華街にでも出るのかと思いましたよ」
「……たしかにその方が夜遊びっぽかったですね」

 私としたことが、これでは夜遊び初心者にすらなれない。

(失敗失敗……)

 もう少し慣れたふうを装いたかったのに、慣れていないのを思いきり露呈させてしまった。恥ずかしくて頬が熱くなる。
 あまり忙しくないのか、バーテンダーはその後も話に付き合ってくれた。
 何度目かのロングアイランドアイスティーを頼み、ほうっと息を吐く。
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