クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい

 園内はかなり広かった。
  夏久さんはこの遊園地について事前に調べていたらしく、なにかあったときにすぐ対応できるよう万全の準備を整えていた。
 複数エリアによってわけられており、いくつかある中でも子供向けのエリアを中心に見て回る。そこならば、私でも楽しめる乗り物が多そうだった。

「あれも乗っちゃだめですか?」
「一切余計なことをしないなら別にいい」
「じゃあ乗りたいです」
「……ほんとにアクティブだな」

 げんなりしたように言いながらも、夏久さんは付き合ってくれる。
 私が希望したのはくるくる回るコーヒーカップだった。

 本来だったら妊婦は避けた方がいいのだろう。けれど、子供向けのエリアということもあって非常にゆっくりした動きだった。
 現に、小さい子供や赤ちゃんを抱きかかえた母親も問題なさそうに乗っている。

 カップを模した席は四人ほど座れるだろうか。中央にはハンドルのようなものがついており、それを回すことでカップも回る。夏久さんが余計なことをするなと言ったのは、ハンドルを回さずにいれば緩やかに回転するだけの乗り物になるからだろう。
 さっそく並んでいる人々の最後尾につき、やや子供っぽい軽やかな音楽を聞きながらそわそわと待つ。
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