クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「いっぱい回したら楽しそうですね」
「絶対やるなよ」
「少しくらいなら大丈夫そうですけど……」
「どうしてそう危機感がないんだ。本当なら遊園地だって来るべきじゃないのに」

 え、と声を上げて夏久さんを見る。

「なのに、連れてきてくれたんですね?」

 夏久さんは私の視線を避けるように目をそらした。

「……君が行きたいって言ったからな」
「……ありがとうございます」

 また少しだけ期待してしまう。

(もしかしたら、言うほど嫌われていないんじゃないかって。だって、夏久さんは最初からずっと優しくしてくれてる)

 これはきっと私の願望で、事実は異なっているのだろう。
 それでも、自分の感じているものを信じたい。

「ほら。前、進んだぞ」
「あっ、はい」

 促されて、先に進む。次の回で乗れそうだった。

「並んでる時間も楽しいですね」
「そうか……?」
「いつもはこんなことをしないので。それに……」

(夏久さんとたくさん話せる)

 無視はされないけれど、避けられはする。
 けれど今はそもそも逃げ道がない。だから夏久さんは私の相手をするしかないのだ。
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