クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 誰かがそっと私の耳元で囁く。

(好きなままでも意味がないなら、もっと好きになっても変わらないんじゃない?)

 もっともだと思う自分がいて、気持ちを抑え込むのをやめた。
 きゅっと夏久さんの手を握り、ちょっとだけ寄り添ってみる。

「ん? 疲れたのか?」

 私が軽く体重を預けたからか、そんなふうに聞いてくる。
 首を横に振ってもう少しだけ腕を絡めてみた。

「……こうしたかっただけです」

(夏久さんにとって違っても、私にはデートだから)

 自分の勇気が最後まで保たれるよう願い、できるだけ夏久さんの存在を感じようとする。
 頼りない想いは、側にいる間ずっと揺れ続けていた。
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