クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
観覧車を降りた後、私たちは手を繋いで閉園までの時間をのんびり過ごした。
他愛ない話をするのは昼間と変わらない。
でも、夏久さんの表情がくるくる変わるようになった。
「そろそろ帰る時間だな。駐車場が混む前に行こうか?」
「夏久さんはもういいんですか?」
「俺のことはいいよ。雪乃さんが決めたらいい」
「だめです。今日は夏久さんの日ですから」
「なんだそれ」
「夏久さんが行ったことないって言ったから、遊園地に来たんですよ。どうせなら最後までしたいことをしましょう」
「ええ……」
夏久さんは困ったようだった。
少し考えた後、帰っていく人の波を見つめてから時計を確認する。
「もう少し粘って、閉園ギリギリに上がる花火を見たいな」
「花火なんてあるんですね」
「今、思い出した」
よし、と夏久さんが私の手を引く。
「どうせならいい場所で見よう。道のど真ん中じゃ落ち着かない」
急いでいる様子なのに、決して走らないのは私の身体を気遣ってくれているからだろう。
私も今まで以上に自分の身体に気を付けながら、夏久さんと一緒に歩き出した。