クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
(……普段、どんな仕事をしてるんだろう)

 やや開いた胸元からのぞく肌をうっかり見てしまった。
 はっとするのと同時に目が合って、にっこり笑いかけられる。
 甘い顔は笑うと右頬にえくぼができるらしい。それに気付いて、なぜかどきっとした。

「あの、私……」
「埋め合わせは後でするよ。おいで」
「あっ、ちょ、ちょっと……」

 その男性は私の腕を引いて奥の席へと連れていく。
 置き去りにする羽目になった男性を振り返ると、残念そうに肩をすくめていた。

「そこ、座って」

 言われるがまま、特に奥まった場所へ押し込められる。
 怖い人ではなさそうだったけれど、突然の事態に頭が追い付かない。

「すみません、人違いだと……」
「こういう場所に来るのは初めてか?」

 さっきまで浮かべていた甘い笑みが消えている。
 尋問されているように感じて、きゅっと心臓が痛くなった。

「……はい。私、なにかしてしまったんでしょうか」
「違う。されるところだったんだ」
「え……?」

 ふう、と男性が溜息を吐く。
 もとから頼んでいたものなのか、テーブルにあったお茶を私に差し出してきた。
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