クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 不思議に思いながら私も立ち止まり、夏久さんの視線の先を追いかける。
 そこに立っていたのは、女の私でも目を見張るほど素晴らしいプロポーションの美しい女性だった。
 腰まである長い髪はウェーブがかっていて、肌にぴったり張り付くようなシャツと七分丈のズボンのラインを際立たせている。
 ぱっちりした目に長いまつげ。勝ち気そうな顔には、それにふさわしい強気な笑みが浮かんでいる。

「もしかして夏久くん?」

 その女性の言葉に反応したのは、夏久さんより私の方が早かっただろう。
 旧知の仲なのは疑いようもない。
 一瞬でもやっとしたものが胸に浮かんだ。

(こんなにきれいな人と、どこで……?)

 驚いたように立ち尽くした夏久さんのもとへ、女性がつかつかと歩み寄る。
 目の前に立つとかなり背が高かった。少し見上げる羽目になる。

百瀬(ももせ)? だよな」

 ようやく夏久さんが反応する。
 私のように“さん”を付けていないだけのことが、どうしてこんなに胸を騒がせるのかわからない。

「そうそう! お久し振り! って言っても……半年振りくらい?」
「もうそんな前か。時間が過ぎるのは早いな」
「こんなとこで会うと思わなかった。アウトドアは趣味じゃなかったと思うけど」

(――どうしてあなたが知っているの?)
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