クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 なぜだかひどく胸騒ぎを感じて、思わず声を発してしまう。

「あ、あの、初めまして。夏久さんがお世話になっています」
「あ、ごめんなさい」

 百瀬さんが私の身長に合わせて少し屈む。
 こうして近くで見ると、顔の小ささと個々のパーツの完成度に眩暈がした。

「私、百瀬みのり。よろしくね」
「東雪乃です」
「一条だ」
「あっ、一条雪乃です」

 夏久さんに突っ込まれて慌てて言い直す。
 百瀬さんにくすくす笑われていたたまれなくなった。

「そういえば夏久くん、結婚したんだっけ」
「直接伝えるのは今が初めてか」
「普通に考えて最低だと思うのよね」

 わざとらしく怒った顔をしてから、百瀬さんは私に向かってにっこり笑った。

「自己紹介に付け加えさせて。――半年前まで夏久くんの婚約者をやってました」

 すう、と血の気が引く。
 意図せず手が震えて、目の前が揺れた。
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