クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
実家に帰ってきた私を、父はなにも言わずに迎え入れた。
思えば、ひとり暮らしを諦めたときもそうだった。
厳しい人ではあったけれど、情のない人ではない。
ずっと、私が帰ってこられる場所を守ってくれていたのだろう。
「ねえ、お父さん。また蹴ったよ」
畳の上で楽な姿勢を取りながら、夏久さんと別れてからずっと大きくなったお腹を撫でる。
「どれ」
テレビを見ていた父がのっそり立ち上がって私の隣に座った。
「予定日まであとどれくらいだ?」
「まだまだ先だよ」
ここで生活するようになってから、ようやくひと月が経とうとしていた。
私が連絡を取らないからか、夏久さんからもなにもない。
それを寂しく思うのは卑怯だと思いながら、いつも切ない気持ちになった。
父の手がおそるおそる私のお腹に伸びる。
あまりにもその触り方がおっかなびっくりで、少し笑ってしまった。
「もう、そんなにびくびくしなくても大丈夫なのに」
言ってから、以前にもこんなやり取りがあったのを思い出す。