クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「私、お父さんにはたくさん感謝してる。今までありがとう」
「改まって言うようなことじゃないだろう。そういうのは……いい」

 あはは、と笑って父から離れる。
 思った通り、照れたように顔が赤くなっていた。

「いろいろ心配かけてごめんね。もう、帰らなきゃ」

 当たり前のように“帰る”と言ったことで、帰りたいと思える場所が父の側以外にもうひとつあるのを自覚する。

「夏久くんのところだな」
「うん」
「送ろうか?」

 それを聞いて笑ってしまった。

「お父さんと夏久さんって似てるのかもしれない。夏久さんもね、私が実家に帰るって決めたときにそう言ったんだよ」
「彼はお父さんよりもっといい人だ」
「いつの間に仲良くなってたの?」

 断言したことにちょっとだけ意外さを感じる。

(そんなに夏久さんと話したわけじゃないはずだけど)

 今度こそ立ち上がって、バッグを手に外出の準備をする。
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