クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「で、送らなくていいのか?」
「あ、うん。大丈夫」

 それだけではそっけない気がして、きちんと父と向き合う。

「私はもう、お母さんになるんだよ。お父さんになんでもやってもらうばかりじゃだめなの。自分のことぐらい、自分でやれるようにならなきゃ」
「そうか……。寂しいな」
「……それでも、私のお父さんはお父さんだけだし、これからもたくさん遊びに来させてね」
「ああ、いつでもおいで。今度は夏久くんと一緒に」
「うん」

(そうなるようにしなきゃ)

 会ったら、最初になにを言えばいいだろう。
 謝罪はするとして、どのタイミングで「好きだ」とこの気持ちを伝えるべきか。

(好きになってくださいって言おう)

 たくさんのものを与えられた上でわがままを言うのは気が引けた。
 だけどそれを伝えることで、ようやく本当に始まる気がする。
 子供を大切に思ってくれるのは嬉しい。
 それ以上に、私を見てほしい。

(あなたの子供の母親じゃなくて、今度こそ妻にならせて――)

 ぽこ、とお腹を蹴られる。
 頑張ってと応援されているようだった。
< 188 / 237 >

この作品をシェア

pagetop