クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
百瀬からアドバイスをされたにもかかわらず、雪乃さんは家を出て行ってしまった。
一日経ち、二日経ち、なにもできない日々が無駄に過ぎていく。
一週間が過ぎても雪乃さんからの連絡はなかった。
自室にこもり、溜息を吐く。
(伝えてるつもりだったんだ。好きだって)
雪乃さんは自分が俺の人生を縛り付けることになると言っていた。
そんなふうに思ったことはないどころか、本当に縛り付けてくれるなら嬉しいとさえ思う。
(……まさか離婚したいほど嫌われていると思わなかった。……いや、嫌われているのとは違うか。そういう感情を持つタイプの人じゃないしな。ただ……俺がつらい思いをさせているだけだ)
家では滅多に飲まない酒を煽り、思えば雪乃さんとの出会いのきっかけも酒だったことを思い出す。
“夜遊び”をすると言い、警戒心をどこかへ置き去りにしてなんでも話していた雪乃さんは、惹かれる以上に目が離せなかった。
騙されたのかもしれないと思っている間も放っておけなくて、でも、俺ばかり心奪われていると思われるのは癪で、うまく接せられなかった。
抱き締めたいと何度思ったかわからないし、遊園地の日にキスなんてしたせいで、それ以上のことを夢に見たときもあった。