クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「俺が誰だろうと関係ないだろ。彼女は……優しくて素敵な人だ」
「どうせ騙されてるんだ。一般人なんだろう? うちの資産が目当てに決まってる」
「女っていうのは怖い生き物なのよ。どうして相談もせずに、いきなり結婚なんて」
(あんたたちがそうやって言うからだ)
「今からでも遅くない。いい相手を見繕うから、そいつとは離婚しろ。慰謝料を多めに払えば文句もないはずだ」
「百瀬さんは新しい方と婚約したらしいし、また別の人を探してこないと……」
(……雪乃さんは“俺”と話をしてくれたっけな)
このふたりは俺を俺として見ていない。
一条家の後継ぎとしか見ていないから、俺に意思があるかどうかを考えない。
それでも親だから、これまでは従ってきた。
今日からはもう、やめる。