クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
・とても幸せなひと時

「――とかなんとか、俺もいろいろしていたわけだ」

 夏久さんの話は長かった。
 明るい口調だったし、本人も軽いノリで話していたけれど、特にご両親の件はとても笑って聞けるような話ではない。

「私がひどいことを言われないように、守ろうとしてくれていたんですね……」
「あの人たちに傷付けられるのも束縛されるのも俺だけでいい」
「……百瀬さんとの結婚もご両親が決めたんですよね?」
「ああ見えて由緒正しい家柄の人でな。一条の嫁にぴったりだと思ったんだろうが……まあ、本人があれだから」
「……素敵な人でしたよ」
「そうか? 俺には雪乃さんの方が素敵に見えるよ」

 夏久さんには目が付いているのだろうかと本気で心配になる。
 でも、嬉しい。

「男勝りで負けず嫌いで、性格だけじゃなく言葉もかなりきつい。……ああ、そうだ。雪乃さんに謝ってほしいって頼まれていたんだった」
「百瀬さんが?」
「余計なことを言って悪かったと思ってるらしい。言葉をオブラートに包むってことを知らないからああなったんだが、悪気があったわけじゃないことはわかってやってくれ。悪い奴じゃないんだ、一応」

 ちり、と胸が火であぶられたように疼く。
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