クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「俺の人生は誰かに決められたものばっかりだった。だけど、君に関することだけは俺が自分で選んだことだからな」
「……はい」

 倒れたときよりも強い眩暈を感じるのはどういうことなのか。
 夏久さんが呼吸の隙も与えないくらいキスを繰り返すせいに違いない。

「あ、の……病院です……」
「遊園地では止めなかったのに、病院だと止めるのか」
「私、一応倒れたんですよ」
「貧血でな。帰ったらまたサプリ漬けにしないと」
「嫌です……」

 夏久さんが笑ったのにつられて一緒に笑う。
 こんなに穏やかな気持ちでこの人と向き合えたのは、最初の夜以来かもしれない。
 なんの不安もなく、ただ好きだという気持ちを純粋に伝えられる。
 簡単なことなのに今日まで遠回りしすぎてしまった。
 そのとき、ぽこぽことお腹を蹴られる。

「……あ」
「どうした?」
「赤ちゃんが蹴ってます。大暴れですね」
「パパとママが仲良しで嬉しいのかもな」
「ずるいって言ってるのかもしれませんよ。混ぜてって」
「残念だったな。ママはもうちょっとだけパパが独り占めする」

 ふたりでお腹に触れる。
 応えるようにまた、力強く蹴られた。
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