クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
(夏久さんはこの子を宝物だと思って触れてくれてる)

 以前、父の言っていた言葉を思い出す。
 これからも夏久さんはこの子にこうやって接してくれるのだろう。
 大切に育てて、愛情をいっぱい注いでくれるに違いない。

(交友関係とか門限とか、その辺りをやりすぎないように私が気を付けないと)

 こっそり心の中で誓ったとき、父がカバンからカメラを取り出した。

「孫の顔を見せなきゃならない人たちがほかにもいるだろう?」
「……しばらく見せてやらなくてもいいんじゃないかと思いますけどね」

 夏久さんがぼそっと言って苦笑する。
 今日まで、夏久さんは何度か実家の両親と話をしたらしかった。
 いくつも約束を取り付けて――主に余計なことを言うなという内容だったらしい――私が退院して落ち着いた後に会いに行くことになっている。

 夏久さんいわく、昔に比べてずっと話しやすくなったとのことだった。
 なんでもお義母さんが協力的だったらしい。なにかとお義父さんに意見しては夏久さんを支持し、私に対しても好意的な発言が増えたようだ。

 ――母親として、母親になる人の気持ちがわかるのかもしれない。
 そう言ったのは夏久さんで、私もそういうものなのだろうと頷いた。
 話を聞く限り、ずいぶんと遅くはなったものの、夏久さんは両親との関係を少しずつ改善しているようだ。
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