クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
 手を握られて顔を上げていられなくなってしまった。彩奈が産まれたあとも、私のことをおかしくなるくらい愛してくれた夏久さん。どんな声で囁き、どんな甘い言葉を言ってくれたのか、こればかりは忘れたくても忘れられない。私の心の奥に刻み込まれてしまっているからだ。

「だが、今日は泊まりの予定だろ。恥ずかしがっても逃がさないからな」

「だから、そういうことを言うのがだめなんです……!」

 夏久さんの口を塞いでしまいたいけれど、手はしっかり握られている。ぶんぶん首を横に振るとまた笑われてしまった。

「せっかくお義父さんが作ってくれた時間なんだ。大切にしよう」

「……はい」

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