クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「変なことを言わないでください」

「はは」

 そもそも夏久さんはアルコール度数が高くても酔わない。それを私は知っている。

「……このあと、お泊まりなんですよね」

「ああ」

「え、と……いつぐらいにお店を出ますか?」

「なんだ、もうホテルに行きたいのか? 別に俺は今すぐ行っても構わないぞ」

「そ、そういうわけでは」

「なら、また終電ギリギリまで粘ってみるか」

「……そこまでは待ちたくないです」

「って言われると、俺はもうさっさと飲んでさっさと出たくなるんだが」

 夏久さんの期待が伝わってきて、顔が火照る。飲んでいるものが本当にこれはノンアルコールなのかと疑うほど熱くなっていた。

< 229 / 237 >

この作品をシェア

pagetop