クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
(私、そういえばキスも初めてだった)

 いつかそのときが来るだろうという思いはあったけれど、まさかひとり暮らしを決めたその夜にファーストキスを済ませることになろうとは思わない。
 たぶん、夏久さんも私がそういう人間だとわかってくれていた。
 だからキスも、触れてくる指先も、泣きたくなるくらい優しくて甘い。

 ゆっくりと私の心が追い付くように、余裕がないと言いながら準備の時間をくれる。
 父以外の男性に服を脱がされたのも初めてだし、当然肌を見せるのも初めてだった。
 電気を消してほしいと言えば聞いてくれるところも、優しくてまた心を奪われる。

「……っ」

 恥ずかしさが限界値に達しようとしていた。
 誰にも触れられたことのない場所を、出会ったばかりの人に許している。いけないことだと思いながら、それを喜んでいる自分がいた。

 初めてだったキスにも少しずつ慣れていく。
 どんなふうに応えればいいのか、夏久さんは丁寧に教えてくれた。

「……誰にでもこんなことをしてるとは思わないでくれ」

 肌を重ねる直前、夏久さんが私を見つめながら囁く。

「誓って、君だけだ」
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