クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「……私もそうです」
「だろうな」
「どういう意味ですか、それ」

 怒ったふりをしてみせると、笑われる。
 その笑みが近付いて唇に柔らかい熱が触れた。
 夏久さんは私の膝裏をそっと持ち上げながら、余裕なく目を細める。

「たぶん、君が思ってるより、君に惹かれてる」
「――っ」

 なにもかも初めてのことばかりで、思考ごと溶けてしまいそうだった。
 自分がどんな声をあげているかすらわからなくなって、何度も夏久さんの名前を呼ぶ。
 そのたびに少しだけ嬉しそうにするのがたまらなくて、抱き締める腕に力が入った。

 誰かを好きになることがこんなに簡単なんて、思いもしなかった。
 騙されているのだとしてもいいと思えるほど満たされていて。そういうところが私の世間知らずなところなのだろう。
 愚かだ、と嗤う人もいるかもしれない。
 でもたしかに私は夏久さんとこの夜を過ごせて幸せだった。

 ――少なくとも、肌を重ねている瞬間は。
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