クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
目が覚めた私は病院にいた。
「……妊娠してるそうだ」
ベッドの横に座った父が、重い溜息を吐きながら言う。
「にん……しん……?」
「身に覚えがないわけじゃないんだろう?」
ぼんやりしたまま、自分の身体を見下ろす。
まったく実感がなかった。でも、父の言う“覚え”はある。
「……で、どこの男だ」
「違うの、お父さん。私――」
「違うもなにもないだろ。男としてきっちり責任取ってもらわないと、このままじゃ母さんに合わせる顔がない」
(――どうしよう)
相手はたったひとりしかいない。だから、私に子供ができているのだとしたら父親はあの人以外にありえない。
だけど、別に夏久さんは悪いことをしたわけじゃない。
「私がちゃんと話をして決めるから……」
「そういうわけにはいかないだろうが……!」
押し殺した怒声にびくっと震える。