クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「いつから、どういう男と付き合ってたのかはこの際いい。けどな、向こうが責任も取らずに逃げることだけは、絶対避けなきゃならないんだよ」

 父の口調が荒い。
 泣きたくなった。どうしてこんなことになったのか、まったく理解できなくて。
 でも、それがすでに私のあやまちなのだろう。こんなことになると考えてあの夜を迎えるべきだったのだから。

(後悔したくない。だけど……)

 私は今、父を怒らせ――悲しませている。

「男の名前はわかるんだろう、雪乃。どこのどいつだ」

 このことを知ったら、あの人はどんな顔をするのだろうか。
 今までにない恐ろしさを感じながら、名前を告げてしまう。

「……一条夏久さん、です」

 下を向いていた父が顔を上げる。

「一条夏久……?」
「……うん」
「そうか、わかった」

 なにがわかったのか、それを言うことはない。
 私を病室のベッドに残し、父は足早に出て行った。
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