クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「こっちだ」

 そう言って夏久さんは廊下に続くものとは違うドアを開く。
 そこも広い部屋だった。真ん中には大きすぎるベッドがひとつ。
 寝室と言うだけあって、本当に眠るためだけの部屋らしい。

「それで、そっちが俺の部屋だ」

 私の部屋とは反対の壁にもうひとつドアがある。
 夏久さんは説明だけして、そのドアを開けなかった。

「俺がいる間もいない間も、君の好きなようにして構わない。でも、なるべく動き回るなよ」
「わかりました。……あんまり物に触らないようにします」

 飾られた観葉植物から少し距離を取ると、微妙な顔をされる。

「壊されるのを心配してるんじゃない。君の身体のことを考えて言ってるんだ」
「私ですか?」
「変に動き回って、なにかあったら大変だろ。俺がすぐに駈け寄れる状況ならいいが、そうじゃないことの方が多いはずだ」
「……心配してくれてありがとうございます」

 冷たいのに、優しい。
 根本的な部分は私が知っている夏久さんと変わらない。

「あの、実家へのご挨拶をした方がいいんですよね。いつ頃に――」

 言いかけて、夏久さんがひどく険しい顔をしたのを見てしまう。
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