クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「意味がわかりません。どうして名前が関係してるんですか……？」
「君の恐ろしいところはそういうところだな。演技してるように見えないから、信じそうになる」
「演技なんてしていません。……あなたに会ってから、ずっと」
「演技をしていないんだとしたら、どうしてすぐに結婚を受け入れたんだ？　普通だったらもっと拒むはずだろ。そうしなかったのは、君の目的が俺との結婚だったからだ」
「あれは……」

　動揺して正常な思考ではなかったというのはある。
　父にこれ以上迷惑をかけられない。夏久さんが納得する形にしなければならない。そう考えてペンを取ったはずだった。

　でも、あの状況でも私は夏久さんにもう一度会えたことを喜んでいた。
　ほかの誰かだったら、もう少し冷静に考える時間を取ったかもしれない。
　だけど夏久さんだったから。この人となら結婚してもいいと、心のどこかで思っていたのはたしかだろう。

「あの夜のことは俺にも責任がある。それはわかってる。……けどな、お父さんのためにここまでするか？」
「……誤解です」
「君のお父さんは一条の息子でよかったと言ってたぞ」
「一条の名前になにかあるんですか？」

　その問いに答えはなかった。
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