クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「どういうこともなにも、そのままだ。……もう切ってもいいか? 明日も早いんだ」
『ふざけるな! なにが結婚だ。勝手な真似を……!』

(勝手? 俺の人生なのに?)

 そう言ってやれたら苦労はしなかった。
 押し込められ、それでも捨てられなかったもののせいで今がある。

「……とりあえずそういうことだから。例の話は俺から伝えておく」
『待て、夏久! 話はまだ終わってな――』

 ぷつり、と電話を切る。
 そのまま長押しにして携帯電話自体の電源を落とした。
 両親は怒り狂っている。それは息子が妻となる人を紹介もせず籍を入れたからではなく、自分たちの思う通りの相手と結婚をしなかったからである。
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