クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
「これ……」
「運動が好きだって言ってただろ。だからいろいろ調べておいた」
「え……」

 定期健診で先生に「運動は好きか」と聞かれたとき、たしかに私は好きだと答えた。
 散歩程度の軽いものだとも言った気がするけれど、夏久さんはあのときの話を覚えていたらしい。

(こういうことをしないでくれたらいいのに)

 悲しいほど胸が痛む。
 結局のところ、サプリメントやタルトと同じなのだ。
 その優しさは私のものではなく、彼の子供のもの。
 嬉しいと私が思うのは正しくない。
 けれど、心は勝手に喜んでしまう。こんなにもいろいろ、忙しい合間を縫って調べてくれたのだと思うと。

「あとはここだな」

 夏久さんが携帯電話の画面を操作する。
 次のページに出てきたのは、島の情報だった。

「別荘がある。プライベートでゆっくりしたいなら、そこが一番いい。こっちより暖かいしな」
「こんな場所が……」
「しばらくそっちで療養する形でもいい。なにかあったとき、いつもの先生は呼べないが」

(島まで調べてるなんて思わなかった)

 驚く私に、夏久さんは次から次へと外出先を提案する。
 説明は細かく丁寧で、かなり時間をかけて調べてくれたことがよくわかった。

「行きたい場所があるなら連れて行こう」

 もう一度リストを見てから、夏久さんへ視線を向ける。
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