クールな社長は懐妊妻への過保護な愛を貫きたい
・予行練習
「社長」
呼びかけられ、思わずがたっと大きな音を立ててしまう。
気分はすっかり自宅だった。しかしここはオフィスの社長室で、俺は今仕事中である。
「悪い。なんだ?」
「特に用事があったわけではありませんが、朝からずっとぼんやりしているようでしたので」
橋本が心配そうに聞いてくる。社内で風邪が流行っているらしいという話があったからかもしれない。
「いや、体調不良ってわけじゃないんだ。ただ……いろいろ考え事をしていただけで」
「なにかお悩みですか?」
「……って言われると、それはそれで困るんだけどな」
悩んでいるといえば悩んでいる。
それは、先日雪乃さんと決めた外出の予定のせいだった。
『私とデートしてください。一回だけでいいので』
あの言葉が今も鮮明に残っていて、気付けばそのことばかり考えてしまっている。
ただの外出のつもりが、デートになっていた。
まだ彼女をどうしていいかわからない俺にとって、それはある意味ひどく恐ろしいことだった。
呼びかけられ、思わずがたっと大きな音を立ててしまう。
気分はすっかり自宅だった。しかしここはオフィスの社長室で、俺は今仕事中である。
「悪い。なんだ?」
「特に用事があったわけではありませんが、朝からずっとぼんやりしているようでしたので」
橋本が心配そうに聞いてくる。社内で風邪が流行っているらしいという話があったからかもしれない。
「いや、体調不良ってわけじゃないんだ。ただ……いろいろ考え事をしていただけで」
「なにかお悩みですか?」
「……って言われると、それはそれで困るんだけどな」
悩んでいるといえば悩んでいる。
それは、先日雪乃さんと決めた外出の予定のせいだった。
『私とデートしてください。一回だけでいいので』
あの言葉が今も鮮明に残っていて、気付けばそのことばかり考えてしまっている。
ただの外出のつもりが、デートになっていた。
まだ彼女をどうしていいかわからない俺にとって、それはある意味ひどく恐ろしいことだった。