逆バレンタインは波乱の予感!?
「ん」

仕事の帰り際、ぶっきらぼうに彼から紙袋を押しつけられた。

「な、なに……?」

これはもしかして、当てつけという奴なのだろうか。
バレンタインなのに彼にチョコを渡さない私に対しての。

「お前、バレンタインに男ばっかりいい思いして狡い!とか、変なことに怒ってただろ。
だから俺からお前にバレンタイン」

くいっ、と黒縁ハーフリム眼鏡のブリッジを彼は中指で押し上げた。

「あ、ありが……とう」

冗談で言ったことを真に受けて、チョコを用意してくれるなんて思ってもいなかった。
おかげで、照れくさくていまだに渡せずにいたチョコはますます渡しづらくなる。

「ん。
じゃあな」

「また、……明日」

手を振って去っていく彼を呆然と見送る。
いなくなると、はぁーっと大きなため気が落ちた。
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