Snow White Princess
二人でこうして話しながら帰るなんて久しぶりで、僕は嬉しくなる。アップルパイの持っていない手をそっと百合に差し出した。百合は笑ってその手を握ってくれる。

「手、冷た〜い!」

「手袋忘れちゃったんだよ。だから、百合の手であっためて?」

「私、カイロじゃないんだけどな〜」

「ええ〜、こんなあったかいのに?」

そんなことを話しながら、家へと向かう。つないで手が温かい。ずっとこうして手をつないでいけたらいいな……。

話す僕たちの目の前に、ふわりと白い何かが舞い落ちた。地面に落ちてはすぐに消えていく。世界を真っ白に染めていく。

「雪だ!」

こんなに寒いのに、百合は子どもみたいに「やっぱり綺麗」とはしゃぐ。一瞬吹いた冷たい風に豊かな黒い髪が揺れていた。

「百合、寒くない?顔が真っ赤だよ」

「えっ?そう?じゃあ早く帰らないとね」

そう笑う顔はとても素敵な笑顔。僕の頭の中には、童話で読んだ白雪姫が浮かんだ。白い肌に黒い髪、真っ赤な唇。まさに僕の隣にいる百合のことだと思う。
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