sweetな彼とbitterなハニー
その年、私は帰り際にチョコを渡したものの付き合ってるのに複雑すぎてそんな心情を察した加奈子さんが飲みに誘ってくれて飲んでモヤモヤを晴らしたのだった。
そんな懐かしい過去を思い出しつつ、そんな可愛げも置いてきた今年はもうこの光景もいい加減見慣れてあっさりと流せるようになってしまった。
普段から甘く優しい彼を良く知っているので、彼女以外の異性でも無碍には出来ないだろうことも理解できているからだ。
まぁ、どこにでもいい顔してるとも言えるけれど……。
悲しいかな、すっかり冷めた感じになってしまったけれど嫌いになったわけではないしお付き合いは順調といえる。
「ただ、停滞期というか何も変わらないのよね……」
ぼそりと呟いた声を拾ったのは隣の机の加奈子さん。
「涼音ちゃん、どうした?」
「いえ、この書類佐々木さんに渡してきます」
出来上がった資料をまとめたファイルを持って私は柊吾さんの席に向かった。
「すみません、失礼しますね。佐々木主任、こちら来週のリニューアルに関する資料になります。ご確認お願いします」
混みあった席周りの女子にサクッと声をかけスペースを作ってもらうと、私は用件だけを手短に伝えてさっさと資料を渡すと自席へと戻る。
「やだ、三橋さんってホント真面目よね。でも、私たちの邪魔することないじゃないの」
ぼそぼそとした小言が聞こえたので、私も振り返るとニコッと一言返す。
「皆さん就業中だと思うのですが、そんなに暇なんですね?」
元々の性格と、三年目にもなれば下の子達も多いので存分に発揮するこの一言は効いたようで、広報部の部長も会議終わりで顔を見せたこともあり女子軍団は渡すだけ渡してサッと散って行った。
「相変わらずの人気っぷりだな、佐々木は。でも就業中なんだからもっと毅然としたほうが良いぞ」
部長も柊吾さんに一言いうと自席に着いて仕事を始めた。
化粧品会社の部長職に相応しく年齢不詳な外見しているが、仕事のできる立派なナイスミドルなのである。
「はい、すみません。みなさん、ご迷惑おかけしました」
立って頭を下げて柊吾さんはまた仕事に戻った。
まぁ、彼だけのせいではないが彼の態度にも問題がないわけではない。
それでも年に一度の恒例なので、みんな苦笑しつつも受け入れてくれている。
チームの仲が良く雰囲気が良いのもこの広報部の良いところだ。