sweetな彼とbitterなハニー
そんな本日の昼休憩。
加奈子さんと社食でお昼を食べていると、本日の就業中と同じ光景が社食でも繰り広げられている。
人気者はお昼もゆっくり食べられないのねぇと内心ため息つつ、私は温玉のせきつねうどんをすする。
「ダメ男は三年経ってもダメ男か……」
そんな加奈子さんの言葉に私はクスッと笑って言った。
「二人っきりの時は、こんな感じよりもっと甘いんですけどね。まぁ、面白くないんで今年はおせんべいしか用意しませんでしたよ」
サラッとした私の返しに、加奈子さんは目を丸くした後にクックと肩を震わせて笑いだした。
「涼音ちゃん、最高だよ。その後の反応ぜひお姉さんに一報寄こしてね」
まぁ、きっとなんてことはないでしょう。
確かにずっと手作りを渡してきた私なりの意思表示ではあるんだけどね。
でも、予告してもあっさり待ってるよしか言わなかったからきっと何も変わらないよね。
まったく、そうなったらそれでもいいんだ。
やっぱり私ってそこそこドライなのかもしれないなと思いつつ、うどんを食べ終えて仕事に戻った。
そんな私の反応をしかり見ているのには気づかなかったし、そんな私に気づかれぬように加奈子さんがジロッと柊吾さんをにらんだのにも気づかなかった。
そうして、私はいつもの通りに定時に仕事を仕上げると席を外している柊吾さんの席におせんべいを置いて退社した。
直接渡さないバレンタインも実は初めてだったが、今年は柊吾さんが忙しいのを分かっていたのであえて特に約束もしなかった。
これで特段の反応が無かったら、実はこの続いた関係に一区切りしようと考えているのはきっと気づかないだろうと私はこっそりため息をつきつつ帰宅したのだった。