春夏秋冬
「ぼーっとしちゃって。一体どうしたの?」
昼休み特有の、賑やかな廊下を歩きながら真実が言った。
「うーん、なんていうか。矢島くん、いるじゃない?」
「ああ、矢島悠斗?あいつがどうしたの?」
「なんだか、ちょっと雰囲気が独特だなって…クラスから浮いてるってわけでもないのに、ちょっと距離があるっていうか」
口に出したものの、なんだかうまく言えなかった。
「たしかにそんな感じだけど、別にイジメでもないみたいだしねぇ…なに?サナは矢島悠斗が好きなの?」
「違うよっ!そんなんじゃなくて!あたしはただ…」
「慌てるところがアヤシイ〜。のんびりしてちゃダメよ。矢島悠斗、意外にモテるんだから」
「だからそんなんじゃないってば!でも、矢島くんってそんなにモテるの?」
「少なくとも美術部の先輩にはね」
「美術部?」
「矢島悠斗は美術部よ。知らなかったの?」
「知らないよ、あたし矢島くんと話したことないもん。真実は知ってたの?」
「まあね、だってあたし美術部だもん」
「え!?そうだったの?」
「頭数増やすためのね。ほとんど行ってないわ」