春夏秋冬



ボロボロの爪じゃ格好悪いので、ヤスリをかけたら親指だけ随分短くなってしまった。

バランスを取るために他の爪も切ってしまったけれど、やっぱり親指の短さだけ少し浮いている。

まあいいか、と思ってハンドクリームを塗って眠った。



たぶん、あの夢の事を私は気にしている。

けれど夢の話なんて学校で会うユウトに言う程の事でもないから、誰にも言えないままでいた。


(気にするようなことじゃない)


所詮は夢なのだと、自分に言い聞かせ、目を閉じた。

短くなりすぎた右手の親指が、少しだけヒリヒリしている気がした。
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