春夏秋冬
傷
あたしはまた、夢を見た。
海の中から、南の島で笑う2人を。
一体、どれくらいの時間がたったんだろう。
あたしが目を覚ますと、部屋の中にうっすらと陽が射していた。
ユウトの体温は隣に無く、ユウトはあたしの視線の先で、上半身裸のまま座ってスケッチをしていた。
ユウトが絵を描くのを見るのは、後にも先にもこれ一度きりだ。
あたしはユウトに声をかけた。
「なに、描いてるの?」
「あ、起きた?」
ユウトはあたしの質問に答えず、手にしていた鉛筆とスケッチブックを置いた。
そして立ち上がり、部屋着のシャツを羽織ろうとしたユウトの背中をあたしは見た。
「ユウト?」
「ん?」
「背中…」
それは、左肩から斜め下に20センチ程伸びた、肌の色よりも少し濃い傷だった。
「ああ」
ユウトは納得したように頷いた。
「昔、ちょっとね」
そう答えられたら、あたしは何にも言えなくなった。
ユウトは、「飲み物、入れ直してくる」と言って部屋を出た。
あたしは起きて携帯で時間を確認する。まだ4時を過ぎたばかりだった。
ユウトが戻る前にと、スカートとシャツを着て、リボンを結び直した。