春夏秋冬


ユウトの傷に触れたのはそれから10日程たった頃、年の暮れが迫った街はどこかソワソワとして、エネルギーに満ち溢れていた。


ユウトはあたしを優しく抱きしめていた。あたしもそっとユウトの背中に腕を回した。指がぷくりと膨らんだ傷に触れる。

ユウトは少しだけ不思議そうな顔をしたけれど、特にあたしを咎めなかった。あたしはそっと傷をなぞった。ぷくりと膨らんでつるつるとした傷を、なんだか愛おしく感じた。


ユウトは閉じかけたまぶたを少し開けて、笑った。


「痛かった?」

「うーん、もう忘れたよ」


ユウトはそれだけ答えると、猫のように、あたしの首元にぐりぐりと顔をこすりつける。


「…くすぐったいよ」


あたしはユウトの傷を撫でるのをやめた。ユウトは首元に顔を寄せたまま、規則正しい呼吸をしていた。

「ユウト、眠いの?」


ぴくりと動いた気がしたけれど、ユウトはもう答えなかった。あたしはユウトの背中を、呼吸に合わせて優しく、ぽんぽんとたたいた。


「んー…」


ユウトの頭を撫でた。ユウトの規則正しい呼吸とあたしの呼吸がだんだん重なっていく。


「おやすみ、ユウト」


白い意識に飲み込まれる直前、あたしは呟いた。
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