春夏秋冬
海にいるもの
海が近いこの街には、雪などめったに積もらない。うっすらと積もってもすぐに溶けてしまう。
年が明けて、新年の慌ただしさも落ち着いたその日は、珍しくグラウンドに誰かの作った雪だるまが現れるほど、雪が積もった。
最近、ユウトはずっと上の空だ。
話しかけても生返事だし、いつにもましてぼーっとしている。
「ユウト?」
頬杖をついて、窓の外を眺めるユウトに声をかけると「んー…」とだけ帰ってきた。
「今日、一緒に帰れるの?」
「そうだね」
「部活は?」
「今日はいいや。よし、帰ろう」
ユウトは立ち上がった。
すでにまばらになった教室の中で、ユウトのイスががたがた鳴るのが、やけに響いた。