春夏秋冬
マフラー
灰色の空と海に囲まれたあの世界から、あたしはどうやってここにたどり着いたのかわからない。
気がつけば、暗い部屋のベッドに突っ伏していた。
「ごめん」
その言葉の中にどんな意味が潜んでいたかなんて、あたしにはわからない。
ただ、あたしにわかったのは。
―――もう二度と、ユウトとあの場所に行くことがないということ。
ユウトが好き。
たぶん、入学式の時からずっと。
一緒にいれる事がすごく幸せだった。
手を握ってくれることがすごく嬉しかった。
けれど、ユウトを知りたいと思ったらユウトは握っていた手を離してしまった。
ゆっくり、一本ずつ指を解くように。
そんな優しさなんていらないから、どうせならもっと突き放してよ。
「…嫌いになることも出来ないじゃない」
顔を埋めたユウトのマフラーにつぶやいた。