春夏秋冬
ユウト、独白。

美しい世界




学校に行かなくなったのは、いつからだろうか。

理由など、とうの昔に忘れてしまった。

白い壁に貼付けた、青たちをベッドから眺める。

意味がわからなかったのだ。学校に行く意味も、先生に算数を習う意味も、友達と昼休みにドッヂボールをする意味も。

そう考えたらまずお腹が痛くなった。

お腹が痛いと保健室に行く俺を担任は仮病扱いした。

面倒になって、お腹の痛さを我慢して授業に出ると今度は熱が出た。

数値で出る結果に、担任は俺を早引けさせた。

それが何日も続くと、とりあえず一日学校を休ませようと父親が言った。

それから、じゃないだろうか。

部屋の中に引きこもり、という事はなかったけれど、外を歩いてみたり、年齢をごまかしてバイトをしてみたりして、ふらふらと過ごした。

ほとんど学校に関して覚えていない。

卒業証書はちゃんとある。けれど思い出がない。


いや、思い出がないわけじゃない。

同級生の誰が足が速いとか、身長が伸びたとかはちゃんと知っている。


寿人の、口を借りて。
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