春夏秋冬
満開の桜の下を走る。
遠い人影が、一本の桜の根元からなにかを拾いあげた。
きらりと光る青。
間違いない。
その瞬間、
強い、強い、風が吹いた。
桜が舞い散り、舞い上がる。
視界を遮るように。
俺は、人影に近付く。
久しぶりの全力疾走は、キツイ。
人影がこっちを振り向く。
長い髪の女の子だ。
胸には青い校章。
女の子と目があった瞬間、俺は大きな大きな抗えない何かに飲み込まれるような感覚を覚えた。
満開の桜が魅せたまやかしなのか、それとも。
―――寿人?
どこかで寿人がけらけらと笑った気がした。
俺は、上がりきった息を必死で押さえて言った。
――――それ、俺の。